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【自動車業界】自動車世界戦争|日本勢は圧勝する!

おはようございます、こんにちは、こんばんは。 知ったかの森チャンネル情報局より、 自動車業界関連の本のご紹介を差し上げます。

contents

message

本書で、筆者が言いたいことは、ズバリ、

日本勢は圧勝する!

具体的には、日本には電気自動車分野、自動運転分野で世界を牽引する産業や企業が多いので、今後は長期的な利益成長が望める、という主張。本記事では、このメッセージを裏付ける論拠を紹介していきます。

author

泉谷渉(いずみや・わたる)
株式会社産業タイムズ社代表取締役社長
神奈川県横浜市出身。中央大学法学部政治学科卒業。1977年、産業タイムズ社に入社し、半導体担当の記者となる。91年に「半導体産業新聞」を発刊、編集長に就任。35年以上にわたって第一線を走ってきた最古参のカリスマ半導体記者である。日本電子デバイス産業協会(NEDIA)副会長も務める。主な著書に『これが半導体の全貌だ!』(かんき出版)、『ニッポンの素材力』『ニッポンの環境エネルギー力』『図解シェールガス革命』『日・米・中IoT最終戦争』(以上、東洋経済新報社)、『100年企業、だけど最先端、しかも世界一』(亜紀書房)などがある。*1

長い間(約40年)、半導体関係の記者としてお仕事してきた人のようです。 著書は本書で26冊目とのこと。 半導体は、自動車やスマホなどの重要な部品ですので、その分野に詳しいということは、業界について深い理解があると言えるかと思います。

audience

  • 電気自動車分野、ADAS(先進運転支援システム)分野を取り巻く産業、特に半導体、電子部品、材料産業について知りたい人。
  • 日本企業は、オワコンなんじゃない?と思っている人(外国の企業に売上や利益で劣っているし、今後はさらに差が開くと思っている人)

terms

TBD

point of view

本記事で注目した内容はこちらです。

電気自動車分野を牽引する日本の企業

日産 for 電気自動車

まず、電気自動車はどの国でたくさん売れるか理解しておきたいですね。 答えは、中国、です。 世界のEV販売台数(2016年)は約76万台、そのうち55.1%が中国です。半分以上!

2016年の地域別EV販売

シェア 地域
1位 55.1% 中国
2位 18.6% 米国
3位 6.3% ノルウェー
4位 4.7% フランス
5位 3.3% 日本

となれば、中国でどうやって、どのぐらいEVを中国で販売するかが、重要になってきますね。 まず、日産の電気自動車に対する取り組みはこちらのように紹介されています。

とりわけ中国へ最も積極的に攻め込もうとしているのが日産である。日産は今のところEVの技術、経験とも日本の中ではずば抜けている。すでに2010年に「リーフ」を投入、既に世界で30万台以上が走っている。EVシフトはさらに加速させる方針で、三菱自動車ルノーを加えた3社で20年までにEV専用の共通プラットフォームを完成させ、22年にはEVなど電動車の販売割合を全体の3割に高める見通しも発表している。*2

そんでもって、この実績を今後どのように伸ばしていくか、これは投資戦略によって決まるわけですが、本書ではこのように紹介されています。

すでに日産は中国の東風汽車集団合弁会社を作っているが、この社長がとんでもないことを述べている。「EVの開発、生産能力増強のため1兆円を投資する」
1兆円という金額に多くの業界関係者やメディアは衝撃を受けた。2022年までの約5年間で20種類以上の電動車を発売するともいっている。*3

日産は、2017年時点で中国での新車販売台数が第3位とのことですので、電気自動車分野を牽引しているといえそうですね。

中国での新車販売台数(2017年)

販売台数 企業名 地域
1位 418万台 VW ドイツ
2位 ? GM 米国
3位 152万台 日産 日本

パナソニック for リチウムイオン電池

また、電気自動車の部品の分野でも、日本の企業は市場を牽引しているようです。 まず、リチウムイオン電池の市場がどんぐらい伸びる市場なのかというと、本書ではこう述べられています。

富士経済研究所の見通しによれば、車載用蓄電池市場は2025年には2016年比で4・6倍、金額ベースでは6兆6138億円になるという。電子デバイスの中でも成長率はトップクラスだ。*4

おおよそ、年率15%の市場成長率だと、10年間で4倍程度になるから、比較的大きな成長率だと言えると思います。特に、車載市場は民生市場と違って、急激な成長があまり見込めない(車の買い替え需要のサイクルが長いこと、自動車の製品開発サイクルが長いことなどが要因と理解)にも関わらず、ですね。

そんなリチウムイオン電池の市場に対して、パナソニックは、米国のテスラとの協業を強めているらしい。 T*5といえば、高級電気自動車で大人気のメーカーさん。テスラの他にもトヨタ、スバル、日産にもリチウムイオン電池を供給しているので、パナソニックの継続的な伸びは期待できるかもですね。

他にも、リチウムイオン電池を製造している日本企業があります。

ちなみに、電気自動車でどのぐらいの距離が走れるかというと、2017年のリーフが一度の充電で400kmとのこと。 東京、名古屋間の道のりが354km(新東名高速道路使用)なので、一回の充電で往路は足りることになる。 おお、十分走れるじゃん電気自動車、といった感じですかね。

ADAS(先進運転支援システム)を牽引する日本の企業

センサーで周囲の状況を認識して、コンピューターで理解してどんな運転したらいいか判断して、といった流れの処理が必要なADASや自動運転分野においても、日本企業は市場を牽引しているようです。

ソニー for CMOSイメージセンサー

まず、車載用のCMOSイメージセンサーの市場がどんだけ伸びそうなのかというと、

117万個(2016年) → 192万個(2020年)

4年間で1.64倍になっているとして、だいたい年率13%程度の市場成長率です。 リチウムイオン電池と並んで、非常に伸びている市場といえそうです。

また、CMOSイメージセンサー全体の市場の中で、ソニーの金額シェアはとても大きいです。

2017年CMOSイメージセンサーの金額シェア市場見通し

金額シェア 企業名 本社所在地
1位 52% ソニー 日本
2位 22% サムスン 韓国
3位 7% オムニビジョン 米国

よって、ソニーが自動運転を牽引する企業であるといえそう。

三菱電機 for 「ダイナミックマップ」

ADASや自動運転では、自動車の周囲の状況を理解し、地図上のどの辺にいるのか理解する必要がありそうですよね。 パッと思いつくのがカーナビやグーグルマップに使われているGPSかと思いますが、自動運転ではもっと高い精度が必要とされるようです。

自動運転を実現するためには、カーナビゲーションシステム用の地図と比べて、一桁以上精度の高い三次元空間情報を持つデジタル地図が必要になる。道路や建物など移動しないモノの情報に加えて、渋滞や周辺車両の進行状況といった刻一刻と変化する情報も併せ持つことが求められる。これらの情報を組み合わせたデジタル地図が、ダイナミックマップだ。

この分野において三菱電機は分野を牽引しているみたいです。 具体的な市場規模は本書で取り上げられていませんでしたが、定性的に本書では三菱電機の優位性が示されています。三菱電機人工衛星についての知見もあるようです。感覚的に地図上で自車の位置を把握するのは大切そうですし、今後も期待できるかもしれませんね。

call to action

本書に感化されて、したいこと、できること。

平均値ではなく、一つひとつの事実を定量的に理解すること。

ルネサス富士通の大量解雇などを見ると、日本の半導体産業や電機産業があたかもオワコンであるかのような感覚に陥る場合があるかもしれません。実際に、編集長は半導体業界に勤めていて知人から「業界は大丈夫なの?」「悪いニュースばかり出ているけどヤバイんじゃない?」と心配されることが多々あります。

確かに、日本企業の利益成長の平均値が鈍化していることは定量的に示せるかもしれません。ただし、すべての企業が平均値に近いわけではないでしょう。平均以上に良い企業(本書で紹介されているような)や、逆に平均より悪い企業もあるでしょう。

そのような現状を一つひとつ理解することで、「この産業とこの企業はたしかにオワコン、だけどこの産業とこの企業はオワコンじゃないよ」という切り分けができるようになることができれば、その事実を基に自分のスキルアップの方向性を定めたり、より良い転職の計画を作ったりできると思います。

まずは、平均値を知って満足するのではなく、その平均値を作っている構成要素に目を向けて、理解することから始めてみてはいかがでしょうか。

quote

日本vs.アメリカvs.欧州
自動車世界戦争
EV・自動運転・IoT対応の行方

電子版発行日2018年6月7日Ver.1.0
著者:泉谷渉
発行者:駒橋憲一
発行所:東洋経済新報社

editor’s note

「日本勢は圧勝する」ってどんだけ抽象的な表現使ってるねん、記者さん。と思うところから始まり、これが記者の術中にハマっていたようで、私の知らない企業の状況について、まざまざと見せつけられました。日本が勝つとか負けるとか、外国が勝つとか負けるとか、そういった次元を超えた領域で、日本は自動車業界を牽引する存在だということが、よく理解できる書籍でした。

editor: 知ったかの森チャンネル編集長

*1:泉谷 渉. 日本vs.アメリカvs.欧州 自動車世界戦争EV・自動運転・IoT対応の行方 (Japanese Edition) (Kindle Locations 2922-2928). Kindle Edition.

*2:泉谷 渉. 日本vs.アメリカvs.欧州 自動車世界戦争EV・自動運転・IoT対応の行方 (Japanese Edition) (Kindle Locations 952-957). Kindle Edition.

*3:泉谷 渉. 日本vs.アメリカvs.欧州 自動車世界戦争EV・自動運転・IoT対応の行方 (Japanese Edition) (Kindle Locations 959-962). Kindle Edition.

*4:泉谷 渉. 日本vs.アメリカvs.欧州 自動車世界戦争EV・自動運転・IoT対応の行方 (Japanese Edition) (Kindle Locations 2135-2137). Kindle Edition.

*5:なぜか編集長のPCではテスラと打つとTと変換される。あぁ単位の方のテスラか